ば、何かきっと気まずいことがあるにちがいない、と、思ったのである。
彼は、いらいらしながら、とうとう夕飯時まで、ぽつねんと一人で二階に坐っていた。
「ご飯だようっ、次郎ちゃん。」
階段の下から俊三にそう呼ばれて行ってみると、みんなはもうちゃぶ台の前に坐っていた。見ると、恭一は泣いたような顔をしており、お祖母さんは怒ったような顔をしていた。父はまだ帰ってきていないらしく、そのお膳には覆《おお》いがしてあった。
みんなむっつりして箸をうごかした。恭一はやっと一杯だけかきこむと、すぐ箸を置いて、二階に行った。次郎も間もなくそのあとについた。二人は、しかし、どちらからも口を利こうとしなかった。
「どうしたんかい。」
次郎がやっと口を切った。
「ううん、何でもないよ。」
それっきり二人は電燈もつけないで、默り込んで坐っていた。
七時過ぎになって俊亮が帰って来たが、飯をすますと、すぐ兄弟三人を座敷に呼んで、ごくあっさりと母を迎える話をした。「亡くなった母さんの代りに、正木の家の人として来て貰う。」ということと「お祖母さんに何もかもお骨折いただくわけにはいかんから。」というのが、話の要点
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