ちゃん、こんなところにいたんか。……どうしたんだい。」
と、恭一の声がすぐうしろの方からきこえた。
「ぼ、……僕、駄目だい。」
次郎は柱によりかかったまま、息ずすりした。恭一は悲痛な顔をして、しばらくうしろから彼を見つめていたが、
「みっともないよ。それに権田原先生が待ってるじゃないか。」
次郎は、やっと涙をふいて、恭一といっしょに校庭の方にあるき出した。そして問われるままに、成績のだいたいを話した。恭一は、国語の方の成績次第では、望みがまるでないこともない、といって慰めたが、そういう恭一本人が、非常に暗い顔をしていた。
権田原先生は、校庭で児童たちに取り囲まれ、両腕を組んで二人の近づくのを無言で待っていた。
「便所に行ったんだそうです。」
と、恭一がいいわけらしく言うと、先生は、
「ふうむ……」
と、うなるように答えて次郎の顔を見、それっきり何も言わないで、つっ立っていた。それから、かなり間をおいて、
「ふむ、そうか、ふむ。……じゃあ、みんな帰ろう。」
と、さきに立って校門の方に歩き出した。
校門を出て、しばらく行くと、先生はうしろをふりかえって、
「あとは口頭試問と
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