持でやるんだね。はっはっはっ。」
みんなは先生がほんの冗談にそんなことを言ってみたのだど思ったらしかった。しかし、先生の気持は、次郎と恭一とには、よくわかった。
やがて入場の鐘が鳴って、みんなはぞろぞろと校舎にはいった。二百人の募集に千人近くの応募者だったので、昇降口はかなり混雑していた。次郎は、きのうまでは何とも思わなかったその光景が、いやに気になり出した。
試験場にはいってからの次郎は、それでも案外落ちついていた。問題紙が配られると、彼はゆっくりそれに眼をとおした。すべてで十問だった。べつに手におえない問題もなさそうに思えたので、彼はいよいよ落ちついて鉛筆を動かしはじめた。
最初に手をつけた三問だけは、わけなく出来た。次に手をつけたのが、小数や分数がごっちゃになっている計算問題だった。ところが、これがやってみると見かけに似ずうるさかった。
やっと答を出すには出したが、何だか不安だったので、もう一度やり直してみると、まるでちがった答えが出た。で、少しあせり気味になりながら、更にやり直してみた。すると、またちがった答が出た。そのうちに頭がじんじんし出して来たので、一応その問題
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