りしていた。恭一は、一番あとから、権田原先生とならんで歩いた。
「ほんとうに九時まえに寝たんかね。」
 権田原先生がたずねた。
「ええ。寝るには寝たんです。」
「すると、寝てから何かあったんだね。」
「ええ、……二人で話しこんじゃったんです。」
「話しこんだ?……ふうむ、……そんなに晩くまで。」
「ええ、少し晩くなり過ぎたんです。」
「何をそんなに話したんだい。」
 恭一は首をたれて、返事をしなかった。
 権田原先生も、それ以上強いてたずねようとはしなかった。そして、中学校の門をくぐってからも、先生は、誰とも口をきかないで、校庭のポプラの幹《みき》に腕組《うでぐみ》をしてよりかかっていたが、合図の鐘が鳴る五六分前になると、急に何か思い出したように、みんなのかたまっているところに来て、いきなり次郎の頭をゆさぶりながら、言った。
「あせるな、いいか。今日は試験場で居ねむりをするつもりでやって来い。……先生の友達にね、よく試験の時に居ねむりをしていた人があるが、その人はいまは大学の先生になっている。」
 みんなが笑った。次郎も淋しく笑って頭をかいた。すると、源次がはたから口を出した。
「その
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