ともするとそれがかすかに息をしているかのように見えた。しかし、弔問《ちょうもん》客が来て、その顔の覆いが取りのけられるごとに、彼の眼にまざまざとうつるものは、まぎれもなく、氷のような死顔であった。
 本田のお祖母さんは、やっと午後になってやって来た。そして死人の前に坐るなり、いかにも絶え入るような声で、いろいろとくどき立てた。臨終の間にあわなかった詫びが、先ず最初だった。それから、
「何という美しい仏様におなりだろう。」とか、
「子供を三人もこの老人に投げかけて、一人で先に行ったのがうらめしい。」
 とか、
「どうして世の中には、こうさかさま事が多いのだろう。」とか、いったようなことを、次第に芝居じみてわめき立てた。俊亮は、それを聞きながら、眼のやり場に困っていたが、とうとうたまりかねて、
「お母さん、――お母さん――」と声をかけた。それでもまだ彼女が死人のそばを離れそうにないので、彼はいきなり立上って、彼女の肩をゆすぶり、叱るように言った。
「そんなに泣かれては、仏が迷います。それより念仏でも唱えてやって下さい。」
 するとお祖母さんは、
「ほんとうに、まあ、老人甲斐もなく、取りみだ
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