して申訳もない。なむあみだぶ、なむあみだぶ。」と、けろりとした顔をして死人のそばを離れた。そしてそれからは、「なむあみだぶ」の連発だった。
次郎はむろんお祖母さんの闖入《ちんにゅう》によって、ひどく気分をみだされた。しかし彼はもう、彼がこれまで彼女からうけていたような強い圧迫を感じなかった。「意地の悪い敵」としての彼女が、いつの間にか「みじめな、一人ぽっちの老婆」に変りかけていたのである。
少し落ちついたころ、葬式をどこから出すかが問題になったが、町の方にはまだ大して近づきもないし、それに、本田の墓地がこちらにあるのに、わざわざ死体を町に運ぶまでもあるまいということになった。しかし、正木の家から葬式を出すのも変だというので、この近在では例のないことだったが、途中葬列を廃して、寺で告別式だけを行うことになった。この事についても、本田のお祖母さんは、しきりに世間体を気にしていたが、寺での告別式なら正木から葬式を出したことにはならないし、正木の家はただの病院だったと思えば何でもない、と言いきかされると、彼女はそれでやっと納得《なっとく》がいった、といったような顔をした。
まだ暑い季節だ
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