めき出しても、彼はやはり石のように坐っていた。恭一と俊三とが両方から彼の顔をのぞいて立ち上ったのにも、彼は気がつかなかったらしい。
「次郎――」
 正木のお祖父さんが、うしろから、そっと彼の肩をたたいた。彼はやっと自分にかえって、眼を母の顔から放した。そして、その時はじめてすべてを諒解したかのように、彼の眼に涙がこみあげて来た。彼はいきなり畳の上につっ伏して声をあげた。
「次……次郎――」
 お祖父さんのふるえを帯びた声が、頭の上にきこえて、その手が再び彼の肩にさわった。
「坊ちゃん――。」
 悲鳴に似たお浜の声がつづいてきこえた。そしてその瞬間に、彼の顔はお浜の膝に、お浜の顔は彼の背中に、ふるえながらつっ伏していた。
 周囲から鳴咽《おえつ》の声がくずれるようにきこえ出した。その声の中を、次郎はお浜に抱かれるようにして部屋を出た。
 死体は間もなく座敷にうつされた。次郎は、お浜や俊亮や正木の老夫婦に慰められて、やっと涙がとまると、むせるように線香の匂いのする母の枕元に、默々として坐りこんだ。そして帷子《かたびら》の紋附をさかさにかけられた母の死体を、一人でじっと見つめていた。彼には、
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