時ではないように思ったのである。
お祖父さんは、座敷の縁で、謙蔵を相手に何か話していた。次郎は思いきってそばに行き、窮屈そうに坐った。そして何にも言わないで手をついて、お辞儀をした、すると、お祖父さんはすぐ言った。
「ほう、あやまりに来たのか、それでいい、それでいい、それでいい気持になったじゃろう。どうじゃ。」
次郎の眼からは、ぽたぽたと涙が縁板にこぼれた。
「泣くことはない。泣くと、繃帯がぬれるぞ。それに、顔がゆがんでしまったらどうする。はっはっはっ。」
お祖父さんの笑声につれて、謙蔵も笑った。次郎は、しかし、いつまでもうつむいて、鼻をすすっていた。
三七 母の顔
真夏に、顔全体を繃帯で巻き立てているのは、かなりつらいことであった。また、そのためにかえって化膿《かのう》したりする恐れもあったので、二三日もたっと、薬だけが紙にのばして貼られることになった。
繃帯をかけない次郎の顔は、まことに見苦しかった。自身鏡をのぞいて見て、ぞっとしたほどであった。黄いろい薬の間から、ところどころに赤黒い肉がのぞいていて、眉のところがのっぺりしている。彼はおりおりこの村に物貰いに
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