とする。ことに今日のようなことがあると、それが一層ひどい。そして、うまくそれが探れないと、彼の気持はみじめなほど憂鬱になって行くのである。
翌日は、彼はもう我慢にも寝ていられなかった。そして起きあがると、お祖父さんの目につくようなところを何度も行ったり来たりして、何とか言葉をかけて貰うのを待っていた。しかしお祖父さんは、いつもちらりと彼の方を見るだけで、容易に口を利こうとはしなかった。次郎は、あとでは、口を利いてさえ貰えばそれがどんな烈しい叱言であってもいいような気にさえなった。しかし、お祖父さんの口は依然として固かった。
次郎は絶望に似たものを感じながら、母の病室に行った。彼は、そこでは、最初から母の叱言《こごと》を予期していた。ところが、母はただまじまじと彼の繃帯でくるんだ顔を見つめるだけだった。そして、かすかな溜息をもらすと、すぐ眼をそらしてしまった。
「お坐り。」
お祖母さんがやさしく声をかけてくれた。彼はやっと救われたような気になって、彼女の横に坐った。
「そのぐらいですんだからいいようなものの、眼でもつぶれてごらん。それこそ大変だったよ。これからはもう花火なんかこさえ
前へ
次へ
全332ページ中300ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング