が村人の口に上るころになると、子供たちも薬屋から硝石と硫黄とを買って来て、それに木炭の粉末をまぜて火薬を造り、毎晩小さな台花火《だいはなび》などをあげて、楽しむのだった。彼らは「しだれ桜」だとか、「小米の花」だとか「飛雀《とびすずめ》」だとか、そういった台花火のいろいろの名称を知っていたが、むろん彼らにそんな巧妙なものが出来ようはずはなかった。彼らはただ小さな竹筒に手製の火薬をつめ、それをいくつも竿に結びつけて水際に立て、下から順々に火を点じてさえいけば、それで満足したのである。もし、一筋の糸が張ってあり、それを伝って一つの花火が突進し、それを導火にして、一番下の竹筒が火を吹きはじめ、あとは次第に上に燃え移るように口火がつながっており、それに最上端の花火が廻転する仕掛にでもなっていれば、それは彼らの工夫としては、最上のものであった。中には、火薬の中に鉄粉をまぜて、青い花火を出して見せようと試みる者もあったが、それに成功するものは極めてまれであった。
「次郎ちゃん、買って来たよ。」
 ある日、次郎が例のとおり病室の次の間で、憂欝な顔をして机の前に坐っていると、誠吉が縁側から這いあがって来
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