ために弁当を持って来ていないのに、竜一の家に行くのが気まずかったのである。
「どうしてだい。」
「どうしてでもいいから、さきに帰っとれよ。」
 彼はそう言って、さっさと門内に這入ってしまった。竜一は不平そうな顔をして、しばらく彼を見ていたが、仕方なしに、他の仲間たちと一緒に帰って行った。
 次郎はしばらく、教員室に最も遠い校舎の角の、日陰になったところに、一人でぽつねんと立っていた。そして掃除当番のがたぴしさせる音が少ししずまったころ、再び校門を出た。
 強い日照の路を、彼はかなりゆっくり歩いた。そして竜一の家についてからも、しばらく内の様子をうかがってから、敷居をまたいだ。敷居をまたぐと、すぐ左側は薬局の窓だったが、中はしいんとしていた。彼はいつものように自分勝手に上りこむ気になれず、いかにも遠慮深そうに、「竜ちゃあん。」と呼んでみた。どこからも返事がない。遠くの方から、食器のふれるような音が、かすかに聞えて来る。彼はもう一度呼んでみる勇気が出なくて、そのまま上り框に腰をおろした。
 彼は少しつかれていた。戸外のぎらぎらした光線が、汗ばんだ彼の顔を褐色に光らせていた。彼は気が遠くなる
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