ていた。それは光でもない、闇でもない、灰色の音のない世界であった。その灰色の世界には、いつの間にか再び「姉」の顔が浮かび出した。そしてまた東京の方に消えた。彼の頭の中には、何度も何度もそれがくりかえされた。教室では先生の指図《さしず》に応じて、本を開いたり、鉛筆を動かしたりはした。しかしそれは全く機械的だった。運動場ではボール投もやり、角力もとった。しかし、彼は何度もボールを取り落し、角力ではすぐ押し出された。
「次郎ちゃんは、今日は真面目にやらないんだから、駄目だい。」
仲間たちは、何度もそんな不平を言った。次郎は、しかし、力のない微笑をもらすだけだった。
彼は竜一ともほとんど口をきかなかった。しかし、いよいよ最後の授業が終って教室を出ると、彼はすぐ竜一をつかまえて言った。
「一緒に君んとこへ行ってもいい?」
竜一はむろん喜んだ。二人はすぐ並んで歩き出したが、校門を出ると、次郎は急に立ちどまって何か考えるようなふうだった。
「どうしたい。早く行こうや。」
竜一がうながした。すると次郎は、
「君、さきに帰っとれよ。僕すぐ行くから」
彼は午飯のことを思い出したのだった。午退けの
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