い出される場合に限られていた。そして、そうした場合でも、彼は必ず病室にいるお祖母さんの許しを得てからにするのであった。で、あとでは、従兄弟たちも、次第に彼を特別扱いにするようになり、彼を誘い出すのを遠慮したり、忘れたりすることが多くなった。
だが、彼のこうした態度には、まだかなりの無理があった。病気の母に対する子として自然の感情からというよりは、この場合そうしなければならぬという義務的な気持の方が強かった。だから、従兄弟たちだけで自由にはしゃぎまわっている声がきこえたりすると、彼は変に落着かなかった。そして病気の母に対して淡い反感をさえ抱くことがあった。しかし、その反感を、少しでも、顔や言葉に表すようなことは決してなかった。
彼の変化は、むろん誰の目にもついた。そして、それがあまり著《いちじる》しいので、みんなを驚かせもし、涙ぐましい気持にもさせた。
「何といういじらしい子だろう。」
そう言って正木のお祖母さんは、おりおり袖口で目尻を拭いた。
「次郎のことだけが心残りだったんですけれど、こんなふうだと安心して死ねますわ。」
お民はよくそんなことを言っては、みんなを泣かした。
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