、そっぽを向いてしまった。
俊亮は、しばらくその様子を見まもっていたが、急におさえつけるような口調で、
「次郎、そんなことじゃ、お前にはまだ母さんの看病は出来ない。お祖父さんがせっかくああおっしゃって下さるが、やっぱり父さんと町に帰ることにしたらどうだ。」
次郎は驚いて父を見た。それから正木老人を見た。しかし、二人共恐ろしく真面目な顔をして、彼を見つめているだけだった。彼はますますうろたえて、祖母とお延を見た。しかし、この二人もにこりともしないで口を結んでいる。
こんなことは、次郎にとって全くはじめてであった。これまで彼が困った場合、彼を救ってくれるのは、いつも俊亮であり、正木の老夫婦であった。お延にしても、謙蔵に対する気兼から、際立《きわだ》って彼に味方をすることはなかったが、心の中では彼の肩を持ってくれている一人に相違なかった。それが今日は申し合せたように、冷たい眼をして彼を見守っている。
(これはただごとではない。)
彼はそんな気がした、しかし、どうしていいのか、さっぱりわからなかった。どんな場合にも、抜け道を見出すことにかけては本能的である彼も、自分の味方だと思っている
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