り、微笑を含んだ父の顔が糸の切れた風船玉のように、彼の鼻先に近づいて来る。彼は、父の微笑の中に、ついさっきまで気づかなかった、ある淋しい影を見出した。そして、彼の気持は、いよいよ滅入るばかりだった。
「次郎、あれが北極星じゃ。」
 正木の老人は、ふいに道の曲り角で立ち止まって、遠い空を指さした。
 次郎は、指さされた方に眼をやったが、どれが北極星だが、すこしも見当がつかなかった。彼の眼には、まだ父の顔がぼんやりと残っていて、その顔の中に、星がまばらに光っていた。
「学校で教わらなかったかの?」
「ううん。」
「ほうら、あそこに、柄杓《ひしゃく》の恰好《かっこう》に並んだ星が、七つ見えるだろう。わかるな。あれを北斗七星というのじゃ。」
 次郎は、やっと自分にかえって、老人の説明をききながら、一つ一つ指さされた星を探していった。そして最後に、やっとのこと、北極星を見出すことが出来たが、その光が案外弱いものだったので、彼は何だかつまらなく感じた。
「海では、あの星が方角の目じるしになるのじゃ。あれだけは、いつも動かないからの。」
 老人はそう言って歩き出した。次郎はこれまで星が動くとか、動か
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