だち》でもしているかのような口調《くちょう》だった。
「皆さんにご心配をかけます。」と、老人は丁寧に頭を下げた。それから、しばらく何か思案《しあん》していたが、急に俊亮を見て、
「ふいと思いついたことじゃが、次郎をしばらくわしの方に預からして貰えませんかな。」
みんながてんでに顔を見合わせた。次郎は先ず母を見た。次に父を見た。それから祖母をちらっと横目で見て、視線《しせん》を正木のお祖父さんに移した。
「次郎、どうじゃ、当分わしの方から学校に通うては。」
「……………」
次郎は返事をする代りに、再び父の顔を見た。
「いや、よく解りました。どうかお願いします。」
と、俊亮は、ちらっと次郎を見ながら言った。みんなは変におし默っていた。
もう随分|晩《おそ》かったが、正木の老人は、その晩のうちに次郎を連れて帰ることにした。次郎は、何のために自分が正木の家に預けられるのか解らなかった。しかし、彼は、それを決して不愉快には思わなかった。むしろ、何もかも忘れて、いそいそと出て行った。ただ真っ暗な路を、村はずれまで歩いて来た時に、彼は、ふと、竜一と春子とのことを思い出して、急に泣きたいような
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