ある。」
「僕、欲しくなんかないけれど、僕、なんだかいやだったよ。」
次郎は、自分の気持を言いあらわす言葉に困って、やっとそれだけを言った。
「いやなのに、見ていたのかい。」
お民がすぐ問いかえした。
「恭一なんか、いやがって覗こうともしなかったのにね。」
と、お祖母さんが、それにつけ足した。
正木のお祖父さんは、にがりきって、また顎鬚をしごいた。
そこへ俊亮と竜一の父とが、晴れやかな笑い声を立てながら、這入って来た。俊亮は、正木老人を見ると、急にあわてて、
「やっ、これは……」
と、いかにも恐縮したらしく、その前に坐って両手をついた。
次郎の眼には、父のそうした姿勢が全く珍しかった。彼は、ゴム人形の膝を無理に曲げて坐らしたときの恰好を心に思い浮かべて、可笑しくなった。
「もうすっかりすみましたかな。」
老人は、いかにも物静かに言って、俊亮と竜一の父とを見くらべた。
「全く面目次第もないことで……」
と、俊亮はその丸っこい膝を何度も両手でさすった。
「いや、どうも、実は私も今日はじめて、承りまして、おどろいているような次第で……」
と、竜一の父は、俊亮の助太刀《すけ
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