して、時とすると、母の顔が、ひょいとお浜の顔に変ったりする。無論それは非常にぼやけている。しかしお浜の顔が浮かんで来ると、しみじみと死んではならないという気になる。そして、想像の世界から急に現実の自分にかえって、お浜の思い出にふけるのである。
だが、お浜の記憶は、もう何といってもうっすらとしている。そして寂しい。そんな時に、彼の心を明るいところにつれもどしてくれるのは、いつも竜一である。竜一は、別に次郎の気持を知っているわけではなく、むろん自分で彼をどうしようというのでもないが、学校の休み時間などに次郎が一人でいるのを見つけると、すぐそばに寄って来る。すると次郎はすぐ、春子に繃帯を取りかえて貰う時の喜びをひとりでに思い出して、明るい気分になるのである。
その繃帯も、しかし、十日ほどで必要がなくなった。春子は、その日|絆創膏《ばんそうこう》を貼りながら、いかにも嬉しそうに言った。
「やっと、さばさばしたわね。暑苦しかったでしょう。……もうこれからあんな馬鹿な真似はしないことよ。」
しかし、次郎は、たった一つの楽しみをもぎ取られたような気がして、変に淋しかった。
「姉ちゃん。」
と
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