までのことだったのである。
二三 蝗の首
由夫と竜一とは、学用品を入れた雑嚢を路に放り出して、蝗《いなご》の首取り競争をはじめている。蝗を捕えては、それを着物の襟に噛《か》みつかせて、急に胴を引っぱると、首だけがすぽりと抜けて襟に残る。それはいかにも残酷な遊びなのである。
「僕、もう五疋だぜ。」
と、由夫がにやにやしながら言う。
「僕だって、すぐ五疋だい。」
竜一は額に汗をにじませて、少しあせっている。
「早く十疋になった方が勝だぜ。」
「うむ、よし。」
「僕が勝ったら、何をくれる?」
「ナイフをやらあ。」
「じゃ、僕負けたら色鉛筆をやる。」
「ようし、……ほら五疋。……あっ、畜生、またはずしちゃった。こいつ、うまく噛みつかないなあ。」
竜一はそう言って、握っていた蝗を気短かに地べたに投げつけた。
「ほら、僕、もう六疋だぜ。」
と、由夫はますます落ちついている。
「くそ! 負けるもんか。」
竜一は顔を真赤にして新しく蝗をつかまえにかかった。
由夫は村長の次男坊、竜一は医者の末っ子である。隣同士なせいで、よく一緒になって遊びはするが、両家の間に変な競争意識があっ
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