と、そんな疑問が湧いて来た。すると、無性にお浜がなつかしくなって、涙がとめどなく流れた。すっかり暗くなった頃、俊亮が手燭《てしょく》をともして二階に上って来た。彼はしばらく立ったまま次郎の様子を見ていたが、
「次郎、そんな真似はよせ。風邪を引くぞ。……ほら、いいものを持って来た。一人で好きなだけ食べたらさっさと降りて来るんだぞ。」
 手燭《てしょく》を畳の上に置きながら、そう言って、何か重いものを次郎の背中の近くにほうり出した。そして、そのまま下に降りて行ってしまった。
 次郎は、動きたくなかった。しかし、知らん顔をしているのも、父にすまないような気がしたので、父が梯子段《はしごだん》を降りきった頃に、ともかく起き上って、父が置いていったものを見た。それは新しい菓子折だった。そっと蓋《ふた》をとってみると、中にはまだ三分の二ほどのカステラが残っていた。それにナイフが一本入れてあった。
 次郎はむしろあっけにとられた。甘いものが箱ごと自分の自由になるというようなことは、彼の経験の世界から、あまりにもかけ離れたことだったのである。彼は少し気味わるくさえ感じた。そしてちょっと父の心を疑ってみ
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