時と場所とが悪かったためなのか、それとも、彼の気持がこのごろ沈んでいたせいなのか、それは誰にも判断が出来ない。とにかく、彼は、今までにない、いやな気分になって、永いこと天井を見つめていた。
 部屋はいつの間にかうす暗くなって来た。
 お祖父さんの顔がはっきり浮かんで来る。ちっとも恐くはない。つづいてお祖母さんの顔が見える。彼は思わず拳《こぶし》を握って、はね起きそうな姿勢《しせい》になったが、すぐまたぐったりとなった。
 しばらくすると、久しく思い出さなかったお浜たちの顔が、つぎつぎに浮かんで来る。不思議なことには、お浜や、弥作爺さんや、お鶴の顔よりも、眉の太い勘作や、やぶにらみのお兼などのきらいな顔の方が、はっきり思い出される。それでも彼は、遠い以前の校番室の夜の団欒《だんらん》を回想して、いくぶん心が落着いて来た。
 が、それもほんの暫くだった。足にさわる畳の冷えが、また彼を現実の世界に引きもどした。彼は自分が現在何処にいるかをはっきり意識すると、淋しさと腹立たしさとのために、じっとしてはいられなくなって、ごろごろと畳の上にころがり始めた。
(僕は本当にこの家の子だろうか。)
 ふ
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