、次郎の頭をなでながら、しばらく何か考えていたが、
「では、次郎ちゃん、もうお帰りなさいね。乳母やはこれから、正木のお祖母さんとこに伺《うかが》って、それからじき次郎ちゃんとこに行きますわ。お母さんがいいっておっしゃったら、今夜は一緒に寝ましょうね。」
 二人は手をつないで立ち上った。そして、校門を出ると、言い合わせたように立ち止って、校舎を見上げた。
 もうその時は、最後の運搬者たちが引きあげたあとで、物音一つしない古い校舎が、黄色い夕陽の中に、さむざむとしずまりかえっていた。

    二〇 旧校舎

 その晩、お浜が別れを告げに来た時には、本田の一家も、流石にしんみりとなった。ふだん彼女の顔を見るのも嫌いだったお祖母さんまでが、みんなと調子を合わせて、十一時近くまで起きていた。そして、俊亮やお民が、お浜に二三日泊っていくようにすすめると自分もはたから口を出して、
「次郎もかわいそうだから、是非そうしておくれ。」とか、
「お正月も、もう近いことだし、どうせそれまでゆっくりしたらどうだね。」
 とか言って、いやにちやほやした。お浜は心の中で、
(ふふん、そのご挨拶の気持も、どうせ明日
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