男が、子供の喧嘩を買って出るなんて、そんな話がどこの世界にあるもんか。」
「お浜、おめえ、自分の子が可愛いくはねえのか、こんな目にあわされても。」
「何言ってるんだよ。ばかばかしい。可愛いけりゃこそ、こうやって私の手一つで、育てているんじゃないかね。お前さんこそ、子供が可愛いくないんだろう。毎日毎日ぶらぶらして、びた[#「びた」に傍点]一文こさえて来るではなしさ。」
 勘作はそっぽを向いて、默ってしまった。
 それまで、気のぬけた泣き声を出しながら、二人の言いあいに聞き耳を立てていた次郎は、どうやらお浜の方が優勢《ゆうせい》らしいのを知って、ほっとした。そして、もう一度お浜の同情を求めるために、大きな声を立てた。するとお鶴の方でも、それに負けないでわめき立てた。
「いつまでも泣くんじゃない。」
 お浜は、お鶴をかろくたしなめてから、次郎の突っ伏しているそばにやって来た。
「次郎ちゃん。勘忍《かんにん》なさいね。」
 お浜は、他の人に向かっては、次郎のことを「坊ちゃん」と呼ぶのだが、次郎本人に対しては、いつも、「次郎ちゃん」と呼ぶことにしているのである。
「次郎ちゃんは、もう大きくなった
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