てむざんにも握飯の表面をまだらにした。
 次郎の眼は異様に光った。彼はやにわに立ちあがって、窓から飛び下りると、うしろから喜太郎の腰のあたりに武者ぶりついた。
 しかし、腕力では、彼は喜太郎の相手ではなかった。次の瞬間には、彼は仰向けに地べたに倒されていた。しかも、彼の胸の上には、喜太郎の大きな膝頭が、丸太のようにのっかっており、両手は、地べたに食い入るように、おさえつけられていた。
 次郎は、足をばたばたさせたり、唾を吐きとばしたりしたが、何のききめもなかった。唾はかえって自分の顔に落ちて来るばかりであった。
 だんだんと息がつまって来る。あせればあせるほど、喜太郎の膝頭が胸をしめつける。次郎は泣き出したくなった。
 しかし、せっぱつまった瞬間に、皮肉な落ちつきを取りもどして、何かの計画を頭のなかから引き出して来るのが、次郎のいつものでん[#「でん」に傍点]である。彼は四五秒ほど、じっと喜太郎の顔を見つめていた。それから、自分の胸の上に乗っかっている膝頭に、そろそろと視線を転じた。膝頭はまるく張り切って、陽に光っていた。自分の口との距離は、わすか一寸ほどである。
 とっさに彼の頭が上
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