盾髢ァ教の中に於て、發見するごときものは、印度の「タントラ」文學中には、發見出來ぬが、其の大體の歸趣は、相似て居る。
密教の始祖は、印度に於て、龍樹菩薩となつて居るが、これに師事して、密教を、七百有餘年間一人で、護持し、金剛智三藏に傳へたのは、龍智阿闍梨耶と云ふことになつて居る、一體、龍樹菩薩は、密教のみならず、種々の、佛教の教義の始祖となつて居らるゝ、又哲學宗教以外の藝術で、例へば、錬金術とか、醫學とかの始祖又は中興者となつて居らるゝ事は、諸君も、御存知のことゝ思ふが、吾輩は、以上の外に、龍樹菩薩は、〔Rati−c,a_stra〕《ラテイ、シヤーストラ》 と云つて、男女愛染の規則を載せた文學の書を大自在天の啓示によりて、書かれた[#「書かれた」は底本では「書かゝれた」]ことを、先年、或る書物を見たときに發見したことがある、佛教者から云ふと、龍樹菩薩は、自分等ばかりの教祖であるやうに思はるゝが、實は、古代印度の諸學術の研究者が、仰いで以て、祖師とする所で是れ又、密教の教祖として、最も適當な資格を具して居られた方である、其の生存の時代は、義淨三藏の南海寄歸傳に據れば、婆多婆漢那《シヤータ
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