使い分け、虫の鳴きマネ、などをやってみせる。いつもニコニコと愛想がよくて、オマケにして見せる芸が至芸であるから、大そうな人気。とぶように売れる。元祖チョーセイアメ、ホラセンベイといえば近郷近在になりとどろき、遠い所から珍芸を見物がてら買いにくる人もある。ホラブンが六尺有余の大きなカラダに持てるだけ持って出た品物が、店をひらくと忽ち売りきれてしまう。
寺小屋はアメとセンベイの製造工場に早変りして、ガキどもはせッせとセンベイをやいている。駄賃にアメとセンベイがもらえて、面白くもない字を習う必要もなく、皿まわしを習うことができるから、大そうな喜びようで、寺小屋の繁昌すること、みんな心をそろえて、
「チョーセイ、チョーセイ、チョーセイ、チョーセイ」
と、咒文《じゅもん》を唱えながら、一心不乱にセンベイをひっくりかえして焼いている。
これを知った庄屋の長兵衛、大そう怒って、のりこんできて、
「コレ、ブンや。お前、とんだことをする。猫の手もかりたいような百姓の子供をセンベイ焼きにコキ使われてたまるものか。お前のような札ツキに寺小屋をまかせたのが、こっちの手落ちだが、今日かぎりセンベイ焼きにコ
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