手助けにはなるものだが、役にも立たぬ寺小屋通いに手伝いの手をとられて百姓どもは大ボヤキ、坊主はモライにならないどころか、ウラミをかう始末で、こんな迷惑なことはない。
ホラブンが子供に人気があるから、坊主は大そうよろこんだ。新居ができて引越しというときに、
「ブンさんや、今生のお願いだが、あんたのところへ寺小屋をひきとってくれないか。末代まで恩にきるよ」
「オレも家ができれば遊んで暮すわけにはいかない。しかし、女房が読み書きに多少の心得があるから、よろしい、寺小屋をやってあげましょう」
寺小屋をひきうけることになった。
しかし、遊んで暮すわけには行かない。女房と二人、夜ナベにセンベイを焼き、アメをつくる。ちゃんとその設計にしてあるから、アメを柱にまきつけて、しごいて、ねって、これをきざんで、重箱につめて、二尺に三尺の大きな二つの荷に造って、これを天ビン棒で、かついで、城下町や、天領の新潟港や、近在の賑やかなところへ売りに行く。
彼は花サカ爺イのような赤い扮装、タイコをたたいて、
「チョーセイ、チョーセイ。ドンドン、ドンドコドンドン」
辻へ箱を下し、人をあつめて、皿まわし、タマの
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