落語・教祖列伝
兆青流開祖
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)唐渡《からわた》り

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五十|米《メートル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)くらすけて[#「くらすけて」に傍点]
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 彼は子供の時から、ホラブンとよばれていた。ブンの下にはブン吉とかブン五とか、つくのだろうが、今では誰も知っている者がいない。ホラブンは子供の時から大きなことばかり言っていて、本当のことを喋ったことは一度もなかったそうである。
 彼の生家は水呑百姓であったが、鶏やケダモノを食うので、村中から嫌われていた。彼の父は怠け者で大酒飲みであったが、冬になると、どこかへ稼ぎに行って、春さきに、まとまった金を持って帰ってきた。村の者は、奴は他国で泥棒してくるのだと蔭口をたたいていたのである。
 ホラブンには二人の姉があって、雪のように白く、絵の中からぬけでたように美しい。けれども村の若者は、四ツ足食いの無法者の娘を恐しがって、手をだす者もいない。
 長姉は城下へでて家老の妾になり、次姉も江戸へでて、
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