て、気がつくと、そんなにノンキなものだと見ることができなくなっている。モチ竿の先がホラブンの手からくりだしてくる力量であるとすれば、チョーセイは別の力の源泉からたぐりだしてくる両刀使いのようなもので、ハテナと思うと、いつのまにか、チョーセイの咒文にこもる力量に身体の周囲をグルリグルリ、グルリグルリと三巻き四巻き七巻き半もされているということが感じられてくる。
「ヤ、これはイカン」
敵の力量の大きさが、ハッキリ分った。格段の差が身にヒシヒシとせまる。
彼は焦って、一気に勝負を決しようと全身の力を刀のキッ先にこめたが、敵にはウの毛をついたほどの隙もない。
モチ竿の先はビリビリ、プルプルン、ジリジリと目にせまる。チョーセイの咒文が頭をしめつけて、だんだん、しびれてきた。
石川淳八郎はジリジリと後退した。己れの力が次第にくずれてくるのが分る。それに比して、敵の力が倍加して身にせまってくる。
脂汗が目にしみる。モチ竿の振動が目の中にくいこんで、彼の目玉をゆりうごかしているような気がする。次第に力がつきて、ついに、全身がしびれ、荒い息使いすら、自分の耳にききとれなくなった。そして、淳八郎
前へ
次へ
全26ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング