けません。先ず、このへんのところへ、こう、腰の位をキッときめまして」
腰をキッときめたのだそうだが、まことに見なれないヘッピリ腰。トンボをつるのと同じ手ツキでモチ竿を突きだして、チョイ、チョイ、チョイと先のフリをためしてみる。
「よござんすか。そろそろ、やりますよ」
そろそろやる剣術なんてものはない。
石川淳八郎は、こんな奇妙な試合は、見たことも、聞いたこともない。まことに奇怪な曲者であると思ったが、イヤ、イヤ、腹を立ててはいかん、敵をあなどってもいかん、天下は広大であるから、油断して不覚をとってはならぬぞ。さすがに老成した達人であるから、血気の荒武者とちがって、心得がよろしい。
「しからば、ごめん。エイッ!」
サッと青眼に身構える。するとホラブンのモチ竿がスルスルとのびてくる。
「チョーセイ、チョーセイ、チョーセイ、チョーセイ」
剣術の試合とちがって、間《マ》がちがっている。勝手がわるい。ホラブンのモチ竿は間ということを考えていないように見える。青眼に構えた刀の先とモチ竿の先が、同じように両者の力点となっていることは剣術の試合と変りはない。
しかし、剣の試合とちがうのは、
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