り遊んだりしている。
村の者は大そうこまった。子供を叱りつけて、野良へつれだして手伝いをさせる。いつのまにやら見えなくなってしまう。
子供が三人あつまれば、野良仕事はそッちのけで、モチ竿を突きだして、
「チョーセイ、チョーセイ、チョーセイ、チョーセイ」
妖しい手ツキで虫や雀を追いまわしている。食事時には、皿まわしをやる。ヒンピンと皿が盗まれる。こわれる。村の子供は、チョーセイ、チョーセイと咒文を唱えると、どんな怪物も疫病も退散すると心得ているらしくて、親父どもが叱りつけたり追っかけたりしても、おどろかず、たちまち妖しい手ツキをして、
「チョーセイ。チョーセイ。チョーセイ。チョーセイ」
親の鼻の先で、両手の指を妖しくふるわせて親を咒文にかけようとする。トンボとまちがえているらしい。
そこで村の大人が庄屋の屋敷へ集って相談会をひらいたが、一同は殺気を帯びて、評定前からむやみに興奮している。
「あの野郎、くらすけて[#「くらすけて」に傍点]やらねばならねが、ハテどうしたもんだろう」
くらすける、というのは、ブン殴るということである。
「それには先ず、てんでが棒、鳶口、クワを持って
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