づく脅迫に悲しみ泣かされている人が実は手紙の束を取り戻した人かも知れない場合だって有りうるでしょう。そして、もしも手紙の束を取り戻した人がもう泣く必要がなくなったのに、まだ脅迫が続いていますと探偵さんに物語って泣いてみせているのだとすれば、それは兄を殺した下手人がその人の一味だと問わず語りしていることではありませんか」
 政子の疑惑には根の逞しい執念が感じられた。思いつめているのだ。真剣に、一途に唯一の狙いに全部をかけた逞しい疑惑だ。
「ともかく、再び日附の配列から、脅迫状と家探しとに一聯の関係の存在が類推され、そしてその真実が証明された。すると三月の場合に一月の日数を当てはめてみると、脅迫状の到着が三月五日、一月ならその五日後が家探しだ。しかし幸いにも、指定日までの日取りを長くしてくれとの周信へ依頼状を書いた杉山さんはコクメイな日記をつけているから、その正確な日を確かめることができる」
 と直ちに問い合わせてみると依頼状は三月十一日の午後投函。すると、十三日、おくれても十四日には周信がそれを読んでる筈だ。
「なんということだ。周信の失踪と寮への怒鳴りこみは、殆ど連続してるじゃないか。
前へ 次へ
全64ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング