明治開化 安吾捕物
その十九 乞食男爵
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)手練《てだれ》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)女相撲|抜弁天《ヌケベンテン》大一座
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)チョイ/\
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この事件をお話しするには、大きな石がなぜ動いたか、ということから語らなければなりません。
終戦後は諸事解禁で、ストリップ、女相撲は御承知のこと、その他善男善女の立ち入らぬところで何が行われているか、何でもあると思うのが一番手ッとり早くて確実らしいというゴサカンな時世でしたが、明治維新後の十年間ほどもちょうど今と同じように諸事解禁でゴサカンな時世でした。ソレ突ケヤレ突ケなどというのは上の部で、明治五年には房事の見世物小屋まで堂々公開されたという。女の子のイレズミもはやったし、男女混浴という同権思想も肉体の探究もはやり、忙しく文明開化をとりいれて今にもまさる盛時であった。
当時は南蛮渡来のストリップのモデルがなかったせいか、または西洋音楽も楽隊も普及しておらぬせいか、ハダカ
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