アッ、そうだ。ここに女相撲の一件があるぞ。そうだッたなア。これをウッカリ忘れているところだったが、アア、実にこれは重大きわまることらしいぞ。実に、ウッカリ。バカだなア。危くこれを見落すところだったなア。すると、女の横綱が狐の化けた女にばかされて大石を運んだという一見バカバカしいことも、笑いごとだと思ってすませると大変な見落しになるかも知れないぞ。とにかく、これを見落さなかったことは幸せだったが、ウム。たしかにそこに何かがある。アア、期待が先走るために頭が混乱してしまう。落着いて特に、益々、落着いて」
新十郎はこう自分に向って言いきかせると、湧立つ胸を必死にしずめて、考えこんでしまった。(ここで一服、犯人をお当て下さい)
★
この事件はその発端が常と変って、新十郎は相棒の同行を許されなかったから、結末に至っても、相棒も海舟先生も現れる余地がなかった。ついに新たな脅迫状が元子夫人をおびやかす日がきた。手紙は待ちかまえていた新十郎に廻送された。
その日から、新十郎は警察に依頼して多くの警官の助力をもとめ、厳重な、しかし敵にさとられることがないような細心の注意をこ
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