の私行について突ッこんだ質問をうけた。その質問をきくと、兄の悪行の九割までチャンと調査ずみと判定されたから、もうこの上は何を隠すにも及ばないと結論し、この失踪に関係アリと信ずべき最大の秘密をきりだした。
「失踪の手ヅルがあるかも知れない心当りは一ツしかないのですが、そこへ私をつれて行って下さい。しかし、約束して下さい。あなた方は自分勝手に調べてはいけませんよ。私とそこのウチのある人とを秘密に会見させていただきたいのです。横から口をだしさえしなければ、皆さんが立会ってもかまいません」
「事情が分ればそれも結構ですが、それはなんというウチですか」
「羽黒公爵家。私の会いたいお方は、公爵家の御曹子英高氏夫人元子さま。もとは浅馬伯爵家の令嬢で、女学校では私の上級生、私を妹のように可愛がって下さった姫君でした」
大変な名が現れてきた。羽黒公爵家は日本有数の大名門。うかつに警官の近づける家ではない。けれども政子の申出であるから、上司に報告し、慎重に協議の上、しかるべき私服を一人政子のお供につけて、両婦人の会見に立会わせることにした。
羽黒元子夫人への政子からの面会を申しこむ。そのとき、ひょッと
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