てみると意外なことが分ってきた。
それが分ったのは政子の口からで、ヘエ、あの女の子も失踪中ですか、と政子は意外な面持であれかれと考えたすえ、
「そうねえ。兄と小花さんは一時関係のあったこともあるけど、恋人というほどではないわね。チヂミ屋が没落しなければあるいは結婚したかも知れないけど。それは私の結婚と同じように処世的、形式的なものね。華族と平民の結婚ですもの、ですから、この二人が駈け落ちするなんてことはバカらしい考えですし、他の何かの理由で兄があの人を誘いだして失踪する場合も考えられませんね。二人の行方不明は無関係よ。小花さんは家が没落して暮し向きが不自由だから、大方インバイにでもなったんでしょう」
こういう話だ。政子は本当のところをズケズケ云ってるのだが、警察の方では男女関係アリとくれば、さてこそと二人を堅く結びつけて考えはじめるのも理の当然。そこで二人を結びつけ、小沼家とチヂミ屋を結びつけて洗って行くと、両家の関係、チヂミ屋の悲運や、小沼男爵一族の悪魔的な素行の数々も分ってきた。そこまで分ったが、それと失踪と結びつくものが見当らない。
政子は上級の警官の密々の訪問をうけて、兄
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