物をぶらさげて一しょについてきた。女中はいらないからと小花がことわったが、
「いいわよ。タダで働いてあげるわ。私の食費もだしていいわ。気が変れば、どこかへ行っちゃうから、それまで置いてね」
もう友達同士のような口々きいて、なれなれしいものだ。見たところ十六七の小娘に見えるが、実は二十二、小花よりも二ツも年長なのだ。すでに友達と見たせいか、本当の年齢を打ちあけた。
「二十二だって! お前、奉公のとき十七ッて云ったじゃないの」
「へへ」
「いやらしいウソつきね。じゃア子供を三人ぐらい生んでるのでしょう」
「そうは見えないでしょうねえ」
と落着き払ったものである。小娘だと思っていたときはフテブテしいイヤらしいところが目立って見えたが、本当の齢を知ってみると、それもうなずける。それになんとなく頼もしい感じもするから、総てのものに見放されて孤立してしまったような境遇にハマの存在は力づよく思われもした。兄と妙なことになりそうな不安はあるが、破産した今となっては、あのマヌケのオタンチン野郎に不足の女房ですらもないらしいではないか。
ところが寮へ移ったその晩から、久五郎とハマは誰はばからぬ夫婦生
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