海舟の前にかしこまっていた。虎之介の話をきき終り、海舟は悠々自在、無我の境に遊ぶようにナイフを逆手に、後クビの悪血をしぼっていた。心ゆくまでタンネンにしぼりつづけているようだ。そして静かに口をひらいた。
「犯人は云うまでもなく火中に自決した駒守その人。ほかに罪ある者はおらぬ。人デンカンとは世をあざむく計略。風守は癩病だよ。生れながらの業病を隠すために人デンカンという奇妙な病人をつくりあげて覆面させたのだろうよ。目のない覆面だということだから、生れながら目がつぶれていたのかも知れないな。それを承知で一度は後嗣に選んだのは、その業病のために一そういたわりをよせる駒守の心事、豪気の丈夫にふさわしい痛快なあわれみと云うべきであろう。だが、いささか情に溺れすぎたところもある。人心を洞察すれば、その然らざる理は当初に心づいて然るべきであったのさ。業病の血をもつ母の故に自害した先妻も哀れの至り。謎をとけば、哀れの至りで、寝ざめのよい事件ではない。テンカンもちのキチガイなら、座敷牢を傷めもしようが、虚弱な業病人でメクラときては、傷めようもないのさ。それを才子に見せかけるために、英信が風守になり代って詩
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