ら持ってきた稿本にてらし合わせて調べた。彼は風守の天才を観照するためではなく、その筆跡を鑑定するために稿本を借りてきたようであった。
「どうです。二人の筆跡はよく似ていると思いませんか。十八と二十とで年齢のひらきはあるが、よく似ている。むしろ同じ手のようだと思われる程ではありませんか」
彼は二ツの筆跡を花廼屋と虎之介に示した。たしかにそれは同一人の手のように似ていたのである。二人もそう思った。
新十郎は暗然として呟いた。
「多久駒守は、なぜ覆面したか。まったく、駒守は、神様のように頭の働く人だ。国家の枢機にたずさわると、海舟先生の次ぐらいに手腕を示した人物かも知れない」
虎之介は呆気にとられて訊ねた。
「すると、あなたは犯人を御存知か」
「まア大体事件の全貌は分ったようです。ただその裏附けを確めるために、テンカンと夢遊病者のことを専門の先生におききすることが残っているだけのようです。では皆さん、今日はさよなら。明日の午《ひる》ごろ、拙宅でお目にかかりましょう。誰が犯人か、それは明日までのオタノシミ」
新十郎は二人をのこして行ってしまった。
★
虎之介は
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