句についてである。
「生きているのはやさしいが、死ぬのはむつかしい」
まったく謎のような言葉である。いろいろな意味に解せられるが、どの答えもこの事件の答案にふれているようには思われない。
光子は駒守によびつけられて叱られたのは、云うまでもなく良伯が告げ口したためだ。あの悟りすました坊主のようなトボケた良伯が、この会話によって告げ口したのは、よくよく重大な意味が会話の裏にひそんでいるために相違ない。
その結果として、文彦が後嗣であり、風守には後嗣の資格がないことを、駒守は光子に明かにしているのだ。そのワケが、この会話のどこにひそんでいるのだろうか。
「すでに遺言状もあるが、まだ文彦の後嗣たることを公表する時期ではない」
時期ではない。妙な言い方があるものだ。時期とは、何をさしているのだろうか?
「母なき子あわれ。母ある子幸あれ」
という一枝の呪文をきいて、駒守は岩がゆれだすように高笑いして、詩心《ウタゴコロ》はあるが、バカな奴メ、とアッサリ片づけているのである。そこにも意味がありそうだ。
すべてそれらのことは、コクリサマの後に、英信が妙に確信をもって木々彦に答えた言葉によって
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