タンだ。
「生きているのはやさしいが、死ぬのはむずかしい」

          ★

 さて、事件の起った日は、風守の誕生日であった。内輪だけの祝いであるが、東京に在住しておる一番近い親戚として、水彦はじめ、木々彦も一枝も招かれて、この三名だけがお客様であった。もっとも、分家として、御曹子の誕生日に奉祝の意を表しに現れるのは当然でもあったのである。
 覆面を脱ぐことのない祖父はいつもの例と同じように一同と共に食卓につくことをしなかったが、その他の家族は水いらずで、話もはずみ、食卓は賑やかだっだ。英信も珍しく杯に手をだして赤い顔になったほどだ。また別席では、下男や下女にも酒肴がでて、こッちはさらにわれかえるような騒ぎであった。
 食事の終りに、ユデタコのように赤くなった木々彦が一同によびかけて、
「私はちかごろコクリサマという術を会得したから、皆さんに教えてあげたいと思うが、英信さん、あなたは特に学のある人だから、あなたの学がこの魔法をどういう風に解釈するかそれを承るのがタノシミなのさ。さア、さア、ひとつ、別席で、コクリサマをやりましょう」
 木々彦はムリに英信をさそい、光子と一枝と文
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