と、次には、それを盗んだ者が何人であるかを突き止めることに努力しました。要するに殺した人が盗んだと思ったのですが、それは当然の着想だったと申せましょう。そこで殺人の現場をつぶさに調べたあげく、犯人を知る代りに、アベコベの物を発見しました。つまり、失われたと諦めた宝石を発見したのです。宝石は屍者のはいた靴のカカトにはめこまれていたのです。屍者は死の瞬間に足を蹴ったので靴のカカトが外れかけていたのです。それに注意した今村氏は、それが専門の靴屋によって精密に造られた二重底の宝石入れで、船長が今日あるを察して出発前に用意した密輸用の容器であるのを知り得たのです。二ツの宝石はその中にありましたが、今村氏はそれをポケットへ納めずに、再び屍者の靴のカカトの中に戻して、誰にも分らぬように蓋をしてしまったのです。なぜならもしも宝石を所持しているのを発見されると、船長殺しの汚名まで蒙らなければならないからです。後刻、人々の油断を見すまして宝石をとりだす時間はあるものと思ったのでしょう。そこでロウソクをふき消し、扉をしめて廊下へでましたが、ええ、ままよと思い、すでに船長が死んでしまえば怖い者はありませんし、
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