まで分っていたら、今から行って犯人をつかまえてきな」
「どういたしまして、五十嵐さんが見込んだ程度の証拠ではユスリの種になりません。明日は五十嵐さんも、今村さんも、大和さんも、皆さんに参集を願いますから、あなた方も必ずお集りをねがいますよ」
 そして四名を送りだした。キンは利巧だから、新十郎とは一面識もないフリを通して、別れを告げて立ち去った。新十郎が事もなげに犯人探しを言いだしたから、虎之介は甚だしく解せない顔、
「明日犯人が分りますかい?」
「たいがい分るだろうと思います」
「大きな真珠もでてきますかね?」
「そこまでは分りませんが、大和という天眼通がノミ取り眼で探しても出てこなかった真珠ですから、この行方は謎ですね。私はここで失礼します」
「オヤ? どちらへ?」
「ちょッと潜水夫のことを調べなければならないのです。さよなら」

          ★

 虎之介は翌日早朝、例の如くに竹の包皮をぶらさげて氷川の海舟を訪問していた。この大隠居はいつも在宅してくれるから、こういう時には都合がよい。
 海舟は日本近代航海術の鼻祖、その壮年期は航海術が本職だから、海のことには通じている。し
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