大和はアッサリ上衣をあけて、捜せ、という身振りを示した。今村は衣服の諸方に手をふれて仔細に調べ、更に彼の所持品を提出せしめて調べたが、そこにも宝石の姿はなかった。
「オレが犯人でないことは分りきっているが、片手落ちは確かによろしくねえな。オレの持ち物で調べてみたいものがあったら、遠慮なく探してくれ」
大和はニヤニヤ笑いながら、
「さて次には真珠の分配だ。人様の品物を預っていて殺されちゃア合わねえや。早いとこ分配するからあとは盗ッ人に気をつけなよ」
全員を甲板へよびあつめて坐らせ、その三間ぐらい前に白布を敷いて、その上に大きな盆に一杯の真珠を置いた。
「いいかい。オレがこう横の方から見ているから、順番の者から白布の向う正面に坐って、皆にハッキリ見せながらピンセットで一ツだけ真珠をとるのだ。選ぶ時には手をだしたり、手にとり上げてはいけないぜ。ピンセットで一度つまんで手にとったものは、後に気に入らねえと云っても取り替えはきかないよ。目で選ぶのは自由だから、ぬかりなくやりなよ」
彼は言葉をきって、改まり、
「さて、船長代理だから、オレが一番目だ。二番目は死んだ八十吉に代って女房キン。そ
前へ
次へ
全52ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング