るという正しい行事の形式を踏まなければ気持がおさまらなかったのが一ツ。又一ツには、奴はメスメリズム(催眠術)を用いているぜ。ヤミヨセに信徒が踊り狂いのたうちまわるのがメスメリズム。狼に食われたと思うのもメスメリズム。メスメリズムにかけておいて、なんなくノド笛をかみきって殺したのだ。さすれば死ぬ者の抵抗がないからだ。これが幸三と佐分利殺しの実情さ。月田まち子を殺したのは、全作、もしくは全作の妹ミヤ子、もしくは両者の共犯なのさ。ミヤ子が見てきたヤミヨセの実景に似せて、カケコミ教の犯罪と見せるために、同じような殺し方をしておいたのさ。そしてアベコベにカケコミ教の謀《はかりごと》だと見せかけたのだよ。これがまち子殺しのカラクリさ。ついでに附言しておくが、快天王の声というのは、世良田が術を使っているのさ。なに、腹話術といって、西洋に遊んだ者は諸方に見かける陳腐な芸さ。場末の寄席芸人が演じて見せる芸だアさ」
★
とっくに午《ひる》をすぎている。虎之介がとんで帰ると、すでに新十郎の一行は出動したあとである。アッと驚くとたんに帯がとけてしまったのを、ひきずりながら一目散に走り
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