明治開化 安吾捕物
その三 魔教の怪
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)茗荷谷《みょうがだに》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ひらいた[#「た」に白丸傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ウジャ/\
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秋雨の降りしきる朝。海舟邸の奥の書斎で、主人と対坐しているのは泉山虎之介。訪客のない早朝を見すまして智恵をかりにきたのであるが、手帳をあちこちひッくりかえして、キチョウメンに書きこんだメモと首ッぴきに、入念に考えこんでは説明している。後先をとりちがえないためである。
「本件に先立ちまして、昨年暮に突発いたした奇怪事から申上げなければなりません。御記憶かと思いますが、昨年十二月十六日、茗荷谷《みょうがだに》の切支丹《キリシタン》坂に幸三と申す若者がノド笛を噛みきられ、腹をさかれ臓物をかきまわされて無残な死体となっておりました。肝臓が奪われておりますので、業病やみの仕業と推定されましたが、生き肝を食うと業病が治るという迷信があるのだそうでございます。ところが、それより
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