だす。ミコだけではない。信徒も一様にいつのまにかゆれだしている。サッとミコたちが跳ねるように立ち上った。すると隣室の方から奏楽が起った。それにつれて信徒がグラグラ上体をゆりながら唄いだす。ミコが世良田をめぐって踊り跳ねつつ走りまわる。全員狂乱の有様であるが、各自骨もロレツも失ってグニャ/\と勝手放題狂いたてているようでいて、何かしら大きなところでピタリと呼吸が合っているのである。
潮がひくように奏楽が終った。すると狼の遠吠が次第に近づいてくるのがきこえた。それをきくと、信徒もミコもアッと恐怖の叫びをあげてバタバタと伏してしまった。狼がついに部屋に到着したらしく、ウォッという荒い叫びが部屋いっぱいにとどろいた。
世良田はキッと身構えて、タイマツのような目をひらいて、
「快天王ノミコト。快天王ノミコト。夜叉払うのミコト。かしこみ。かしこみ。きこしめしたまえ」
これを二度三度唱えて、口と目を同時にピタリと閉じる。するとどこかに小犬のワンワンなく声がして、次に小さな男の子の声で、
「風呂番はいないか。風呂番はいないか。風呂番はでてこい」
声につれて信徒の列から一人の大男か亡者のように蒼
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