ヤミヨセには信者以外の者は列席を許されないときつい定めがございますが、お義姉《ねえ》様の特別のはからいで列席を許されなすったのでしょうか」
 ミヤ子の顔色はビクとうごいた気配もない。それでもしばし口をつぐんでジッと新十郎を見つめているのは、思わぬ急所をつかれたからであったろうか。やがて平然と答えた。
「そう。姉のはからいかも知れません。特に心霊的に解釈いたしましてね。姉があの日のヤミヨセという行事で狼に食いころされるかも知れないと大そう怖れているのを知りましたから、あの人が狼に食い殺されるならずいぶん面白い見モノだろうと思って、居ても立ってもいられなくなりましたのです。幸い天王会の本殿は元山賀侯の御本邸で、達也様なら内情におくわしかろうと御案内をたのみました。山賀侯爵家は当家の仇敵のようなものですが、達也様は天王会を目の敵にするお方ですから、二三度お会いしただけで親しい方ではありませんが、あつかましく御案内をたのみました。快く引きうけて下さいましたので、マサカと思っていましたが、狐憑きの血筋は争われないものですね」
 新十郎は笑って、
「お嬢さまはお考えちがいをなすッていらッしゃいます
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