初音サンに談じこんだ。
「あなた、結婚の意志がないんなら、オヤジの呼びだしを拒絶して、当分身を隠した方がいいと思うな。オヤジ、今に大病になるよ。殺人が犯罪なら、人を大病にするのも犯罪だと思うがなア」
「脅迫するわね」
「オヤジを大病にして面白がっているのなら、悪魔派だね。その趣味もわかるけど」
「そんな悪趣味じゃないわよ」
「とにかく、オヤジはダラシがないねえ。ボクだって、もしボクが女なら、あの人物の求婚は拒絶すると思うな。この際ハッキリ拒絶した方がオヤジのためにも良いですね」
「本当? じゃアあなた私が拒絶したあとの責任もって下さる?」
「そんな責任もてないですよ。責任は責任、それは各人ハッキリしなければいけません」
「ずるいわね」
「じゃア、一思いに結婚して下さいな。ボクは本当はその方を望んでいるんですけど、あなたに悪いと思ったから、遠慮してたんですよ」
「結婚すれば、私あなたの母親よ。あなたのようなナレナレしい倅なんて、変だわね」
「それは違いますよ。あなたはオヤジのオヨメサンにすぎないです。ボクの母親では絶対にありません」
「わりきれてるわね」
「それじゃアあなたは、オヤジと結
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