惜しげもなく見せている娘なんて、いやしませんでしたよ。平気で裸体を見せる女はいますけど、その場合は、平気という構えなんですね。裸体を意識しての平気なのです。あの娘は違うんです。着物を着てる時と同じように、自由なのです。澄みきってるのですね。無邪気というよりも、利巧なんでしょうね。とびぬけて利巧なのだと思いましたよ。それに、すばらしく美しいですね。顔ばかりじゃなく、身体全体が……」
 熱病にとりつかれたような様子である。初音サンはよろこんで、
「そうお。彼女はそんなに大胆不敵? 私も、やろうッと」
 タオルや化粧道具をつかんで急いでお風呂へでかけた。美女観察のためでもあるらしかった。ところが彼女は怒って戻ってきた。
「私が行ったらね、彼女はもう着物きてるところだったわ。変に私を見つめるのよ。そしてね、お姉えチャン美人ねえハイチャ、だって。バカにしてるわよ」
「初音サンの態度が悪いからさ。物見高い気持を利巧な彼女に見破られたのさ」
「なにが物見高いのよ」
「まア、止しなさい。私も一風呂あびてこよう」
 と梅玉堂もタオルをぶらさげて出かけたが、廊下にそれを待っていたように娘と少年が壁にもたれ
前へ 次へ
全30ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング